急患とインフルエンザ

インフルエンザが脅威となる小児の急患について、
急患の診療実績の豊富なドクターにお話をうかがいます。


第3回 薬物治療

治療薬とその役割

現在、インフルエンザの主な治療薬はオセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、アマンタジン(シンメトレル)の3種類です。前回も少しお話ししましたが、アマンタジンは耐性ウイルスが多く、小児科ではほとんど処方されませんので、ここではタミフルとリレンザについてお話ししましょう。
タミフルもリレンザもインフルエンザウイルスが増殖するときに細胞から切り離されるところに必要な酵素ノイラミダーゼにひっつけて、作用をプロックする薬剤です。つまりウイルス増殖を抑制する薬です。
タミフルは飲み薬で、ドライシロップとカプセルとがあります、一方、リレンザは吸入するタイプの薬で、口で吸い込むようにして吸入するか、変則な使い方ですが、吸入機を使って薬を溶かしても吸入できます。効果やお値段の面での差異はほとんどないと考えられますが、吸入するタイプはウイルスが増殖する場所と考えられる粘膜に直接分布するので、より良く効くのではないと思われます。しかし4歳以下は適応外となります。またタミフルの1歳以下は適用外となります。(小児科の使っている薬は適用外が多いのですが)患者さんには一般的に飲み薬の方が効いた感じがするのでしょうか、タミフルの方が受け入れが良いようです。またタミフルもリレンザもこれを連続して服用する期間は予防効果があるとされており、限られた特別な場合で予防投与しますが、そのときは自費診療であり、薬の量は治療の半量で倍の日にちの10日間処方となります。

治療薬の効果と副作用

タミフルもリレンザも発症してから48時間以内に飲むとされています。早ければ早いほど良く効くのですが、インフルエンザであるという判定は熱が出て、最低でも半日、確実なら一日経ってからでないと鼻汁の迅速診断キットで陽性に出ないので、診断が確定後の処方となることが多いでしょう。しかし、家族で順番にインフルエンザに罹患しているようなリスクの高い場合は、必要と思われるときは処方される場合もあります。
先年、タミフルの副作用が取り沙汰され、10歳代の患者には処方をしない方針が出されましたが、異常行動はインフルエンザそのものによる場合も多くみられ、因果関係は未だはっきりしていません。リレンザにも同様の副作用はあるはずです。しかしタミフルはより多く使われており、また動物実験で脳を興奮させる作用があるという結果が出ている論文もあったりして、大きく注目されたのかもしれませんね。
さて、服用は処方どおり5 日間飲んでいただくことをお勧めします。2日ほど飲んで熱が下がると止めてしまう方が多いようですが、また熱が上ったり、ウイルスを抑えきれなかったりすることがあります。正しく飲んでいただけたらと思います。
勿論、インフルエンザは特別な場合を除いて、自然治癒する感染症ですので、これらの治療薬を使わなくでも、熱やしんどさが2〜3日伸びるだけです。最近は両親が共働きで、すぐに保育園に、学校に戻りたいと考える方も多いせいか、是非処方して欲しいという方もいますね。

併用薬について

治療薬と併用して症状を緩和する、いわゆる対症療法として薬が処方されることも多いでしょう。例えば咳がひどい場合は咳止め、関節の痛みが強ければ解熱鎮痛剤、鼻が出て困る時には抗ヒスタミン剤、喘息のある場合は抗アレルギー剤や気管支を拡げる薬というように。また、合併症のところでも言いましたが、インフルエンザと細菌の混合感染が肺炎症状を悪化させるので、抗生剤を使われることもあります。最近では漢方薬を出す先生も増えてきました。もともと生薬に含まれているリグニンや、ポリフェノールなど、抗ウイルス作用や、免疫増強作用や解熱作用があり、古くから感冒には使われてきました。
一方、ここで気を付けたいことは総合感冒薬です。その成分に解熱作用のあるアスピリンやジクロフェナクNa、メフェナム酸などが入ってないかを確認する必要があります。こちらの成分はインフルエンザ脳症との関連性が言われており、小児科では禁忌となっています。同じ解熱剤でもアセトアミノフェンはよいとされています。

鳥インフルエンザとその対策

インフルエンザウイルスはA型、B型、C型とあり、流行するのはA型とB型です。A型は人間以外にもトリやブタ、ウマなどに感染します。A型の中でも種類があり、HAで16種類、NAで9種類、これを掛け合わせた組み合わせ144種類が存在するといわれ、人間への感染が認められているのは一部です。最近、新型として話題になっている鳥インフルエンザはH5N1という種類で、渡り鳥が感染源といわれ、感染力は非常に弱く、最初は鳥から鳥への感染しか確認されていませんでした。しかし東南アジアで鳥インフルエンザにかかって死亡した例が報告され、特に青壮年の方が急に悪化するので、いつ脅威となるか分かりません。対策として、感染した鳥を徹底的に処分すること、患者さんを速やかに隔離して、治療することですが、今後の動向に注目しなければならないと思っています。


渡部玉蘭 先生 Doctor Profile
氏名: 渡部玉蘭 先生
所属: 京都第二赤十字病院 小児科副部長 
略歴: H2年 聖マリアンナ医科大学卒業
H2年~H6年 東京聖路加国際病院小児科研修
H6年~H13年 京都第二赤十字病院小児科勤務
H14年~H16年 米国のTeikoku Pharma,medical adviserとして勤務 Stanford大学附属病院小児科アレルギー・免疫科外来研修
H16年~H17年 テキサス州MD.Andersonがんセンター免疫科研究員
H17年~ 京都第二赤十字病院小児科勤務
H19年 同小児科副部長

資格:小児科専門医